いつかこんな日々が

※HA時空のような謎時空です。細かいところは気にしないでください。
※作者の好みにより慎二のデレが多めです。




 珍しく衛宮邸が家主だけになり、恋人の間桐慎二が泊まりに来た、翌朝。
 士郎は同じ布団で眠る慎二の寝顔を愛おしそうに見つめていた。
 くせ毛を梳いたり頬を撫でたり、そうやって愛でたいけれど、そうすると眠りが浅い慎二は起きてしまうかもしれない。昨晩だいぶ無理をさせた自覚があるので、すやすやと良く眠っているところを起こすのは申し訳なかった。
 そう思っても高校生男子の性欲というのは正直者で、首元に見える、昨晩自分が付けた紅い痕に、士郎は簡単に煽られる。
 昨晩の慎二は乱れに乱れた。士郎の手でどろどろに溶かされた慎二は、快楽の涙を溢れさせながら士郎を求めて甘く啼いていた。それはもう可愛く乱れて、士郎も途中から記憶があやふやになるほど興奮してしまった。
 いつもと場所が違うせいもあったかもしれない。二人きりになるのが久しぶりで、激しく求め合ったからかもしれない。誰もいないのをいいことに居間でおっぱじめ、士郎の部屋の布団で2回して、風呂場でも1回やった。いくら元運動部の高校生でも、それだけやればもうクタクタだ。布団に戻ってくる頃には慎二は半分寝ていて、寝転ぶと同時に気絶したように眠ってしまった。士郎も士郎で目を瞑って開けたら朝だった訳だが。
 と、それほどしたはずなのに、士郎の中心は寝起きのせいもあり熱を持って頭を擡げ始めていた。寝たら色々リセットされたのかもしれない。それなら仕方がない、と自分で言い訳をする。こんな機会、めったに無いわけだし。寝足りなければ後で寝かせておこう。
 慎二の肩を押して仰向けにし、Tシャツを捲って肌を露出させる。昨晩の名残か、ツンと立っている乳首に目を奪われ、思わず吸い付いた。
「んっ……」
 慎二から小さな声が漏れるが、起きてはいないらしい。疲れてよほど深く眠っているのだろう。ちょっとの罪悪感と、それを超える興奮が湧き上がる。
 刺激を与えすぎないよう慎重に舌で捏ねながら、自身の張り詰めた性器に手を伸ばす。先端にはもう先走りが滲み出ていて、それを塗り込むように擦ると熱い吐息が漏れた。慎二が起きる前に、早くイッてしまわないと。
 尖りを舌全体で包むように撫で、少し性急に性器を弄る手を動かす。胸を刺激されて感じているらしい慎二から時折漏れる声に煽られ、すぐに射精感が込み上げてきた。
 口を離し、慎二の白い肌を見下ろす。脇腹にいくつか散った紅い痕が昨夜の情事を思い出させ、くぐもった喘ぎが漏れた。薄く割れた腹筋の線に指を這わせる。ここに、ぶちまけたい。欲望のまま扱き続け、士郎は望み通り慎二の腹に白濁をぶちまけた。
 荒く息をしながら、満足げに、散った白濁のすぐ上に口付けを落とす。慎二の綺麗な身体を汚すことで征服欲が満たされると知った時は、自分でも意外だと思ったものだ。
 さて、慎二を起こしてやしないかと視線を上げ、
 じとっとした目で見つめる慎二と目が合った。
「あ……」
 無言のまま、慎二は視線を落として自分の腹を見る。呆れたような目に、士郎の背を嫌な汗が流れていった。
「い、いつから起きてたんだ……?」
「服まくられた時からだけど?」
 つまり自慰の一部始終を見られ聞かれていたということか……! 寝ていると思ったのは目を閉じて寝たフリをしていただけだったらしい。
 これは今日1日不機嫌コースまっしぐらに違いない……士郎があれこれと機嫌を取る方法を頭に浮かべ始めた時、慎二がニヤッと笑って口を開いた。
「いーぜ、続けろよ、えみや」
 寝起きで発音が甘い声。それに加えて慎二は自分でズボンと下着を下ろし、緩く勃ち上がった性器を露出させた。
 士郎が、ゴクッと喉を鳴らした。
 最後の理性で腹に散らしたものをティッシュでひと拭きし、ニヤニヤ笑い続ける口を塞ぐ。舌を差し入れて口内を慎二が好きなように荒らすと、鼻から甘い声が抜け、腕が士郎の首に巻きついた。
 士郎の手が胸元を這い、舌を合わせたままさっき嬲った突起を摘む。少し力を入れると、慎二の身体がビクリと跳ね、熱い吐息が漏れた。そのまま摩ったり軽く押し潰したりを繰り返す。
 行為を重ねるうちに敏感になった尖り。くすぐったいと不機嫌そうに文句を言っていたのが遥か昔のようだ。今では、甘い声を漏らしながら膝を擦り合わせ、物欲しそうに腰を揺らすのに。
「慎二、ちゃんとここで気持ち良くなれるようになったな。えらいぞ」
 ちゅっと音を立てて唇を離し、ふと思い立ってそんなことを言ってみた。言葉責め、というやつのつもりではあったけれど、
「んぅっ……!?」
「えっ」
 途端、慎二の身体がビクビクと震え、どぷっと白濁混じりの透明が溢れ出た。
 てっきり怒られるか引かれるかのどちらかだと思っていた士郎は、良い意味での裏切りにポカンと口を開ける。
「慎二、今……軽くイッた、のか……?」
「ッ……!」
 驚きを隠すことなく言えば慎二の顔が一気に真っ赤になる。どうやら図星のようだ。
「お、お前っ、この僕に、え、えらいとか、何様のつもりだよ!」
 真っ赤なまま、慎二が怒鳴る。その目は、羞恥に耐えかねて涙が零れそうになっていた。
 これは、新たな性癖を開拓してしまったかもしれない……
「悪い……まさか、慎二が褒められて感じるとは思わなくて……」
「感じてない! 馬鹿っ、ばか衛宮!」
 相当恥ずかしかったのか、慎二は腕を振り回して抵抗した。しかしその腕は難なく士郎に受け止められ、布団に縫とめられてしまう。羞恥の涙をいっぱいに溜めた目で睨んでも逆に士郎を煽るだけだ。
「続き、してもいいか……?」
 欲を湛えた目で、限界を訴える。慎二がぞくりと身を震わせたのが判った。
「手、離せよ」
 要求通り解放された慎二は、脚を開いた状態で膝を立て、数時間前まで士郎に拓かれていたそこを晒す。
「衛宮がどうしてもって言うなら……ここ、使わせてやってもいいぜ……?」
 尻を掴んでまだ柔らかいそこを開き、蠱惑的な笑みを作って今度はわざと士郎を煽る。反撃のつもりなのだろう。まんまと煽られた士郎は、慎二の前髪をそっと上げて額に口付け、はっきりと興奮を孕んだ声で言った。
「ちゃんと欲しいって言えてえらいな、慎二」
「っ、言ってない! お前が、したいって言ったんだろ……!」
 口でいくら否定しても、晒された後孔がひくついたのは見えてしまっている。士郎は微笑みながら「そうだな」と返し、お言葉に甘えるため手を伸ばした。
 布団の側に置いたままだったコンドームの箱から1枚取り出し、封を切って装着する。その一連の動作を、慎二は熱が籠った目で見つめていた。早くと急かしたいけど言えないのだろうなと察し、素直じゃないなと苦笑する。
 次にローションのボトルを取って中身を出し、手のひらで温める。
「慎二、そのままで入りそうか?」
「ん、たぶん。……一応指入れてみて」
 ローションを入口に垂らし、言われた通り、まずは2本を慎重にナカにいれる。大丈夫そうなので3本目。少し圧迫感があったが、それも少し動かすとすぐに緩んだ。確認のためバラバラと動かしてみると、慎二が腰を反らしてナカを締める。士郎の肩が軽く蹴られた。
「くどい」
 とろりと溶けた瞳は、口より素直に物を言う。
「ごめん」
 短く答え、慎二の腰を抱えて薄い膜に包まれた猛りを宛てがう。ちゅぅと吸い付いて欲しがる後孔に、焦らすことなく突き立てた。
「っひああッ! い、あっ……!」
 一気に奥を貫かれ慎二が悶える。解れた内壁は少しキツい程度に締め付け、士郎を更に奥へと誘った。それに応えて先端を奥に押し当て小刻みに揺する。
「いっ……ひ、ぁ……それっ、それやだって、えみやぁ……!」
 腰を掴む腕に縋る慎二は、止めたいのかもっととねだっているのか。両方か。
「慎二、気持ちいいならちゃんと言わないとダメだぞ」
 入口付近の腹側をとんとん軽く叩きながら言う。言ってからもう1度奥に押し当て、ゆっくり抽挿して焦らした。
 いつになく意地悪な士郎に慎二が「おまえ、今日なんなの……」と呟く。それでも焦らされて理性は擦り切れ、もどかしさに腰が揺れていた。
「慎二、奥、気持ちいいか? もっと欲しい?」
 奥に押し付け、数度揺すってまた離れ、ゆっくり抽挿。何度か繰り返すうち、小さい喘ぎの他は沈黙を守っていた慎二が、耐えきれず答えを口にした。
「きもちい……奥、きもちいから……もっとぉ……」
「よし。ちゃんと気持ちいいって言えてえらいな慎二」
「ふあぁっ……やだ、えみやっ……」
 いい子いい子と頭を撫でると、慎二の瞳が蕩けて涙を零す。きゅうと締まったナカに応え、士郎はさきほどより更に奥に行こうと押し込み、揺さぶって責め始めた。
「ああッ! きもちいっ、えみや、やっ……きもちい、からぁ……!」
 慎二は箍が外れたように何度も"気持ちいい"と繰り返した。時折士郎の名前を混ぜながら繰り返される高く甘い声と言葉に、士郎も煽られ限界が近付いてくる。
「慎二かわいい……ここ、気持ちいいな……ずっとぎゅうぎゅう締めてて、俺も、気持ちいい……っ」
 奥を責め続けながら耳元で言えば、慎二はぐずるような声を上げてイヤイヤと首を振る。快楽がキャパシティを超えているのだろう。逃げたいけど、もっと欲しい。そんな本音が聞こえて士郎を煽る。
「えみや、だめっ……おかしく、なる……から……」
 喘ぎながら言った慎二の言葉に、士郎は熱に浮かされた目で微笑んだ。
「いい子だから、一緒におかしくなろうな、慎二」
 途端、士郎は慎二の腰を持ち上げて激しく欲望を打ち付け始めた。突然強く貫かれた衝撃で慎二は達し白濁を散らす。が、士郎は動きを緩めることなく腰を振り続けた。
「いってる! いってぅ、からぁ! とま、やらっ、あ、あっ!」
 びゅくびゅくと吐精しながら終わらない快感に身を震わせ、全身で士郎に縋り付く慎二に、当然止まれるはずもなく。士郎は締め付け搾り取るように蠢く内壁を何度も掻き分ける。
「慎二、しんじ、すきだ……しんじ……!」
 今度は士郎が慎二の名前を繰り返した。その度慎二のナカは喜ぶように締まり、士郎を絶頂へと導いていく。
「……め、えみ……きちゃっ、あああ!」
 ごりごりと襞を擦り奥を穿たれ、慎二が先に悲鳴を上げて果てた。身を強ばらせて背を反らせ、吐精の無いナカだけの絶頂。さっきよりも強い締め付けに耐えきれず、士郎はぐぅと呻いて精を放った。



「おい衛宮、ケチャップ」
「かけるのか? 良いけど、布団が悲惨なことになるから気を付けろよ?」
「はっ、さっき散々悲惨なことにしておいて今更だろ。こぼされたくなかったら口に運んで食べさせるくらいのことはするんだね」
「え、良いのか? 慎二が嫌がるかと思って言わなかったんだけど……」
「……今のナシ。自分で食べる。ケチャップもいらない」
 布団にうつ伏せになったまま、慎二はスプーンを手に取ってもそもそとオムライスを食べ始めた。眉間にシワを寄せたまま美味しそうに食べ進める慎二に、士郎は苦笑する。
 慎二の柔らかなくせ毛に触れ、梳いた後、掻き混ぜるように頭を撫でた。
「えらいな、慎二」
 ぴくっと肩を震わせて、慎二は恨めしそうに士郎を睨む。
「……あのさ、お前からそうやって褒められても何にも嬉しくないからな。気持ち悪いだけだよ」
 「そっか、悪い」と答えた士郎には、真っ赤になった慎二の耳が見えている。けれどそれを指摘したら、今度こそ不機嫌コースまっしぐらだ。
「そうそう、最近ケチャップ新しく買ったからデルモンテにしてみたんだけど、どうだ?」
「……? えっ、おま、嘘だろ、アレ覚えてたのかよ!?」
「えっ、まぁ、慎二が言ってたことだからな」
 照れくさそうに頬を掻く士郎に、慎二はひとつ舌打ちをする。けれどその顔は、嬉しそうに朱が差して口元を緩めていた。
 髪を梳きながら。こうやって、他愛ない話をしながら自分が作った料理を食べてもらって、これは間違いなく"幸せ"なんだろうとぼんやり考える。いつか二人で暮らしたら、毎日のようにこの"幸せ"を享受できる。それはすごく魅力的だけれど、どうにも現実味がない。描こうとした将来の姿は、靄がかかったように輪郭が酷く曖昧だった。
 今はただ、目の前の"幸せ"だけでいい。
 士郎は、自分が作ったオムライスを完食しようとしている、愛しい恋人の額にキスを落とした。

結城

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